FXと貧富の差
 このように、長期移動平均線からのかい離率で見ると、円安は行き過ぎ圏にあり、いつ急反転に向かってもおかしくない危険ゾーンでの推移が続いているといえそうだ。では、実際の円急反騰はいつ起こるのか。  それを考える上で、かい離率は絶対的なものではない。たとえば、実質実効相場で見た場合、97年は2月にマイナスかい離率が18.3%まで拡大したが、実際の円急騰が起こったのは5月だった。また、90年の場合は、マイナスかい離率が4月に13.8%まで拡大したところで円安は終了、円急騰に転じた。  このように見ると、かい離率と円安反転にはある程度誤差がある。実際には、一ヶ月で5−10%のドル急落が起こったら、いよいよ行き過ぎた円安も終了、基調転換に向かったことを事後的に確認するのが基本といえそうだ。 円安の転換は、理屈抜きの結果論というケース、「循環」型が基本だ。その例外が85年プラザ合意、「20年に一度」型。さて、今回はどちらのパターンになるのか。いずれにしても、後者のパターンになった場合は、プラザ合意後に二度と200円以上のドル円の時代に戻らなくなったように、相場水準の常識が変わり「幻の円安」となってしまいかねないリスクがある。 過去10年間の円安・ドル高の転換は、2002年1月135円と、1998年8月147円などがある。この2つは、日銀利上げや円買い介入、G7(7カ国財務相会議)声明などの具体的イベントが転換のきっかけになったわけではない。  当時の感覚からすると、135円や147円でそれまで続いてきた円安が終わったと思った人はほとんどいなかったのではないか。この時の日足、週足、月足を見ても、特別なサインは感じられない。 FX取引、FX初心者、くりっく365、FX口座開設、FX資料請求  円安は終わったわけではなく、またすぐに更新のチャンスはあると思っていたところ、次第にその可能性が後退していき、振り返ってみたらじつは円安ももう終わっていたことに後から気付いたというものだ。  円安の転換は、こんな具合に「何となく」という結果論のパターンが基本だ。しかしその例外が85年プラザ合意。G7の前身であるG5によるドル高是正合意を受けた協調介入といった明確な実力行使で、円安・ドル高の基調を強引に転換させたのである。 最近の米議会での為替法案の動きには、このプラザ合意の記憶が重なるところがある。キーワードは「ミスアライメント」。経済実態から極端にかい離した通貨の特定を、米財務省に求めるということだ。  もしも日本円が「ミスアライメント通貨」に特定されたら、適正圏より大幅な過小評価になっているとの結論が出ることは間違いないだろう。この為替法案では、実効レートを目安にしているが、円の実効レートは、実質は約20年ぶり、名目も10年ぶりの安値水準まで下落しているからだ。  円の実効レートは、実質ならこの20年のレンジ下限を15%程度も下回っている。名目でも、この10年のレンジ下限を10%程度下回っている。その意味では、円は最低でも10−15%は過小評価されているということになりかねない。そうなると、最低でも円の下限(ドル上限)は110円ということになりかねない。  プラザ合意でのドル高是正は当時240円程度で推移していたドル円を、200円割れに誘導することを目指したものだが、実際はそれ以上のドル大暴落となり、もはや200円以上のドル高・円安に戻ることはなくなった。  もしも円がミスアライメント通貨だとなったら、もう2度110円より円安・ドル高に戻らない、そんな「幻の円安」といった根底から覆りかねない事態が起こりうるのが、「プラザ・パターン」の円安転換だろう。7月が始まった。経験則的には、7月は一年で最もドル高・円安になりやすい月だ。しかし円安は、もうかなり長く続いている。その意味では、経験則的に確率の低い「7月ドル安」の可能性も頭に入れておく必要があるのではないか。 7月のドル高は、過去12年間で10回。これは1月の9回、9月の8回を上回っており、「一年で最もドル高になりやすい7月」ということになる。しかもそんな7月は、昨年まで7年連続でドル高だ。さて、今年も7月ドル高で、連続記録は8年に延びることとなるのか。それとも8年ぶりの「7月ドル安」となるのか。 FX  過去12年間で10回もドル高になっているということは、7月のドル高確率は8割を超えている。これだけ確率が高いのだから、7月にドル高になりやすい季節性があることは間違いないだろう。たとえば、日本の6月ボーナス資金の外貨投資要因や、サマーラリー、夏の株高・ドル高要因などがよく聞くところだ。  そんな7月に、例外的にドル安になったのは96年と99年。このうち96年は、1ドル=100円突破の円高「超円高」からの反転円安基調の中で、7月ドル安もそんな基調の息継ぎに過ぎなかった。一方99年の場合は5月から始まった円高への基調転換をダメ押しする「7月ドル安」だった。  この99年、そして前年98年は7月ではなく、その翌8月から円高へ基調転換した。こんな具合に、長く続いてきたドル高・円安が、夏前後に基調転換したケースが何度かあった。その意味では、今回も円安・ドル高がすでにもうかなり長く続いてきたことから、経験則に反して「7月ドル安」になる可能性も要注意なのではないか。  ところで、ドル円の6月レンジは120.77−124.14円の3.37円。つまり、3月から続いている4円未満の値幅が4ヶ月連続ということになったわけだ。  過去に、同じように4円未満の値幅が4ヶ月続いたのは、2000年以降について調べたところ2回(2003年10月−2004年1月、2006年8−11月)あった。この2回とも、翌月は値幅が5円弱に急拡大していた。 FX  なお、4円未満の値幅が5ヶ月以上続いたのは、少なくとも2000年以降で調べた限りではない。その意味では、さすがにそろそろ7月の値幅は5円前後に急拡大する可能性が高いと予想されるだろう。  7月は、傾向的には本来そう動く月ではない。2000年以降の7月値幅平均は4.35円で、1年12ヶ月の中でも第9位だ。2000年以降の7年間でも、4円未満だったのが3回あるといった具合で、本来は夏枯れを先取りして小動きになってもおかしくない。そんな小動きの夏相場に波乱が起こるのかが焦点になる。日本の通貨当局である財務省が「突然」、円安牽制に動き出したことが憶測を呼んでいるが、どうやらこの裏には米国の動きがありそうだ。6月13日に米上院に提出された「通貨為替監視改革法」。これはここ数年の為替問題の潮流から少し変化のあるものだ。具体的には日本も標的にし、不適正な為替相場是正へ協調介入を求めている点で、いわば「第2のプラザ合意」だということ。まだ市場がノーマークなのは、危険かもしれない。 「財務省が円安対応を協議」といった26日付けの一部報道が為替市場でも注目され、少し円高の動きになっている。ところで、この報道でもっとも注目されるのは、なぜ急に日本の当局は円安牽制に動き出したのかということだろう。  日本の当局を動かしたのは何か。その答えは、どうやら米国の動きにありそうだ。じつは6月13日、この日は対ドルでもついにこの間の円安値を更新した日だったが、その日に米上院では超党派議員による「通貨為替監視改革法」が提出されていた。この法案を受けて、財務省幹部の間で対策が密かに協議された可能性はかなり高そうだ。 FX  この法案については、一般報道もされている。ただし、内容がどうも正確に理解されていない可能性がある。なぜなら、この法案は、ここ数年の為替問題の潮流からいくつかの点で重要な変化がありそうだからだ。  一般報道では、この法案はここ数年の傾向に沿って、中国を標的にしていることに力点が置かれていたが、じつはこれは同時に日本も標的にしている。もう一つ重要な「変化」は、キーワードが「マニュピレイト(操作)」から「ミスアライメント(不適正)」に変更されている点だ。  「ミスアライメント」、つまり不適正な為替相場の是正を強調し、協調介入によって実力行使に動いた代表例は、1985年G5(5カ国財務相会議)によるプラザ合意だ。ちなみに、円相場は、実質実効レートからすると、そのプラザ合意以前の円安水準に戻っている。  そういった中で、為替問題のキーワードを、「ミスアライメント」に変更してきたことは、人民元安とともに、円安の是正で協調介入を検討するといった「第2プラザ合意」のシナリオが浮上してくる可能性が出てきたといった意味になる。 この法案については、9月には下院も通過する見通しが有力とされる。そうなると、「第2プラザ」が現実味を帯びてくる可能性がある。こんなふうに見てくると、財務省幹部が、にわかに円安対策を協議したのも理解できるだろう。  もちろん、実現性についてはいくつものハードルがありそうだ。たとえば、日本ですら3年以上為替介入を見送っている。米ポールソン財務長官も市場実勢追認派と見られている。そういった中で協調介入が簡単に実現するとも考えにくい。また、現状の為替水準が「ミスアライメント」だとして、では適正な水準はいくらなのか。  それにしても、適正な為替が現状より円高水準になるとの見方が現実的なところではあるだろう。また、今回の報道が正確に伝えられていない懸念があることから、為替市場がこの問題に対してまだまったくのノーマークになっている可能性があることは要注意といえそうだ。 リスクプレミアムの上昇が再燃している。2月末には円買い戻しが殺到する一因となったものだが、今回の場合は米金利上昇に伴う金利差拡大、景気への楽観からほぼノーインパクトとなっている。しかし本当に大丈夫なのだろうか?リスクプレミアム上昇再燃、今回のキーワードは住宅ローン関連証券のCDO。ベア・スターンズ証券のヘッジファンド損失を受けて、メリルリンチ証券が融資の担保としていたCDO売却を検討している。しかしこのCDOは、流動性が低いため、実態より極端な割高評価になっているとの「疑惑」がくすぶり続けている。  もしもメリルの売却で、その「疑惑」が本当だったということになれば、それはその他の投資家にとっても、巨額評価損計上の連鎖につながっていく可能性があるものだ。要するに、メリルは「パンドラの箱」をあける可能性があるわけだ。  ここ数日、NY金融市場の主役の一つは、明らかにこの「CDOショック」の帰趨だった。20日はNY株が急落、米金利上昇再燃となった。そして21日にNY株が反発に転じたのは、メリルがこのCDOについて全額売却しない方針を明らかにしたため。ただ米債は引けにかけ反落。そして22日、NY株もあらためて大幅反落となった。 FX  こういった中で、リスクプレミアムを示す指標は悪化している。スワップスプレッドは、一時0.58%台まで低下していたが、20日に0.60%まで上昇、21日にはさらに0.62%を超えた。6月に入ってから世界的長期金利急騰局面で、12日には0.64%近くまで急騰したが、それ以来の水準まで再上昇となっている。  リスクの高い資産の代表的存在でもあるエマージング市場債券も、21日は下落した。これらはリスクプレミアム上昇により、リスク回避、リスク投資圧縮の動きが広がっていることを示している。